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最高裁判所第一小法廷 昭和24年(れ)717号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人米田米治郎上告趣意について。

(イ)所論は、「それ等の超過價格について物價廳長官の許可その他の法定の除外事由があったかなかったかについては何等の摘示論及がない」と、主張している。

しかしながら、本件のごとき犯罪において、物價廳長官の許可その他の法定の除外事由のあることは、刑訴三六〇條二項にいわゆる「法律上犯罪の成立を阻却すべき原由たる事実上の主張」に該当し、その有無は同條一項の「罪となるべき事実」に当らない。だから、被告人又は弁護人から原審において特にその主張のない限り、そして本件においてはかかる主張はなされなかったのであるから、原判決においてこれについて何等の判断を示さなかったことは当然であって、何等の違法は存しないのである。論旨は、それ故に理由がない。

(ロ)所論は、販賣の相手方を明示しない違法があると主張する。成程賣買を具体的に表示するためには、厳格に言えば、買主を特定することが望ましいことは勿論である。しかしながら、本件は物價統制令による價格違反の事件であるから、この事件を処理する上においての必要な事柄は判示されている。

販賣の相手方すなわち買主が、甲であるか、乙であるか、誰であるかは、本件の処断の上において、重要なものではないから、他の点で全体から見て事件の具体性、同一性が判明している本件において、特に買主を明示しなかったことをもって違法であると解することはできない。なお原判決の挙げている証拠を見れば、買主は共同被告人毛野勇であること明白である。(その他の判決理由は省略する。)

よって旧刑訴四四六條に従い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 真野 毅 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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